自己資金でどこまで備えられるか:保険を減らすための考え方
ご自身の貯蓄や資産を活用した保険の考え方
多くの方が、将来の万が一に備えて保険に加入しています。しかし、現在の保険契約がご自身のライフスタイルや経済状況に本当に合っているのか、疑問を感じることもあるかもしれません。特に、日々の忙しさの中で保険について深く考える時間が取れないまま、漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
保険は確かにリスクに備える有効な手段ですが、必ずしも全ての保障を保険で賄う必要はありません。ご自身の貯蓄や保有している資産、そして公的な保障制度を賢く活用することで、保険料の負担を軽減しつつ、必要な備えを整えることが可能です。ここでは、ご自身の自己資金を活用して保険を見直すための基本的な考え方をご紹介します。
自己資金を活用するメリット
ご自身の貯蓄や資産をリスクへの備えの一部と考えることには、いくつかのメリットがあります。
- 保険料の削減: 必要な保障の一部を自己資金でカバーできれば、その分、保険で備える必要のある保障額を減らすことができます。これにより、毎月あるいは毎年支払う保険料を抑えることが期待できます。
- 資金の柔軟性: 保険は特定の目的(死亡、病気など)が発生した場合に保険金が支払われる仕組みですが、貯蓄や資産はご自身の判断で様々な用途に活用できます。予期せぬ出費や、保険以外の緊急事態にも対応しやすくなります。
- 資産の増加: 賢く資産を運用できれば、自己資金が将来のリスクへの備えとして成長する可能性があります。ただし、運用にはリスクが伴う点には注意が必要です。
自己資金で備えるための基本的なステップ
ご自身の状況に合わせて自己資金を活用するために、以下のステップで考えてみましょう。
ステップ1:どのようなリスクに、いくら備える必要があるか洗い出す
まずは、ご自身やご家族にとって「万が一」の状況がどのようなものか、それに備えるためにどれくらいの資金が必要かを具体的に考えてみます。
- 例1:ご自身に万が一のことがあった場合(死亡)
- ご家族(配偶者や子供)の今後の生活費、住居費、教育費など
- ご自身の葬儀費用や整理資金
- 遺族年金などの公的保障で賄える金額
- 残された借入金(住宅ローンなど)
- 例2:ご自身やご家族が病気やケガで入院・手術した場合
- 治療費、入院費、手術費
- 差額ベッド代など健康保険適用外の費用
- 長期療養になった場合の収入減
- 高額療養費制度などの公的保障でカバーできる金額
- 例3:働けなくなった場合
- 病気やケガで長期にわたり働けなくなった場合の生活費
- 傷病手当金や障害年金などの公的保障で賄える金額
これらのリスクに対して、具体的にどれくらいの資金が必要になるかを概算してみます。
ステップ2:現在の自己資産(貯蓄、投資等)を確認する
次に、現在ご自身がすぐに利用できる貯蓄や、いざという時に換金できる資産がどれくらいあるかを確認します。
- 銀行預金(普通預金、定期預金)
- 株式、投資信託、債券など(換金性やリスクを考慮して冷静に判断します)
- 生命保険の解約返戻金(解約を前提とする場合)
- 不動産などの売却可能な資産(ただし、売却には時間がかかる場合があります)
ここで確認するのは、「いざという時にリスクへの備えとして充当できる資金」です。日々の生活費や、近い将来に使う予定のある資金(住宅購入の頭金、子供の教育資金など)とは区別して考えましょう。
ステップ3:公的保障や会社の福利厚生でカバーされる範囲を確認する
日本には手厚い公的な社会保障制度があります。これらの制度で、特定の事態が発生した場合にどれくらいの保障を受けられるのかを確認することは非常に重要です。
- 医療費: 健康保険(高額療養費制度など)
- 病気やケガによる収入減: 傷病手当金
- 障害状態になった場合: 障害年金
- 死亡した場合: 遺族年金、埋葬料など
- 失業した場合: 失業給付(雇用保険)
また、お勤めの会社によっては、病気やケガによる長期欠勤中の給与補填制度や、死亡退職金、遺族への弔慰金などの福利厚生制度がある場合があります。これらの制度でカバーされる金額や期間を確認することで、ご自身で備えるべき金額が見えてきます。
ステップ4:自己資金と公的保障で不足する部分を保険で補う
ステップ1で洗い出した「備えるべき金額」から、ステップ2で確認した「自己資金」と、ステップ3で確認した「公的保障や会社の福利厚生」でカバーできる金額を差し引きます。
備えるべき金額 - 自己資金 - 公的保障・福利厚生 = 保険で備えるべき金額
この計算により、ご自身で備えるべき金額のうち、どのくらいを自己資金で賄えるか、そしてそれでも不足する部分を保険でどのように補うべきかが見えてきます。もし、自己資金と公的保障で多くの部分をカバーできるのであれば、現在加入している保険の保障額を見直したり、保険の種類を調整したりすることで、保険料を削減できる可能性があります。
判断する際の注意点
自己資金を活用して保険を見直す際は、以下の点に留意することが大切です。
- 貯蓄の余裕: リスクへの備えとして自己資金を充てる場合でも、日々の生活費や緊急予備資金は十分に確保しておく必要があります。無理な節約のために生活が立ち行かなくなっては本末転倒です。
- 資産の換金性: 投資している資産をリスクへの備えとする場合、必要な時にすぐに換金できるか、またその時点での市場価格によって価値が変動することを理解しておく必要があります。
- 将来のライフイベント: 住宅購入、子供の教育資金、ご自身の老後資金など、将来使う予定の資金と、リスクへの備えとしての資金は分けて考えることが重要です。
- リスク許容度: ご自身がどれくらいのリスクを自己資金で引き受けられるか、というリスク許容度も考慮に入れる必要があります。保険は、万が一の事態による経済的な打撃を軽減するためのものです。ご自身にとって許容できないほど大きなリスクに対しては、やはり保険での備えを検討すべきでしょう。
まとめ
ご自身の貯蓄や資産、そして公的な保障制度を理解し、これらを活用して保険を見直すことは、無駄な保険料を削減し、ご自身のライフプランに合った効率的なリスク管理を行う上で非常に有効です。
現在の保険契約が必要か不要かを判断する際には、単に保障内容を見るだけでなく、ご自身の経済状況全体を踏まえて考えることが大切です。今回ご紹介したステップを参考に、ご自身の状況に合わせて、自己資金と保険の最適なバランスを見つけてみてください。
どのような備え方がご自身にとって最適かは、個々の状況によって異なります。この記事が、ご自身の保険について見直すきっかけとなれば幸いです。