会社の保障・公的制度と保険:重複していないか確認する方法
会社の保障・公的制度と保険:重複していないか確認する方法
現在加入している保険契約について、漠然とした不安を感じている方は少なくないかもしれません。特に、いくつかの保険に加入している場合、それぞれの保障内容が本当に現在の状況に合っているのか、あるいは不要な重複がないのかは、判断が難しい課題です。保険を見直す際には、ご自身のライフステージの変化や将来設計だけでなく、勤めている会社の保障制度や国が提供する公的制度についても考慮に入れることが重要になります。
これらの会社の保障や公的制度は、民間の保険で備えるリスクの一部をすでにカバーしている場合があります。これらを知ることで、加入中の保険の必要性をより正確に見極めることができる可能性があります。
この記事では、会社の保障や公的制度がどのようなものがあるのか、そしてそれらが加入中の民間の保険と重複していないかを確認するための基本的な考え方とチェックポイントをご説明します。
会社の保障とはどのようなものか
会社員として勤務している場合、給与や休暇制度だけでなく、病気やケガ、万が一の場合に備えるための様々な保障制度が用意されていることがあります。これらは会社の福利厚生の一環として提供されており、その内容は会社によって異なります。
代表的なものとして、以下のようなものがあります。
- 健康保険組合からの付加給付: 会社が加入している健康保険組合によっては、公的な医療保険の高額療養費制度に加え、さらに医療費の自己負担分を軽減する独自の給付制度(付加給付)を設けている場合があります。これにより、予期せぬ大きな病気やケガで医療費が高額になった場合の負担が、さらに抑えられることがあります。
- 団体保険: 会社が契約者となり、従業員が加入できる保険です。生命保険や医療保険、がん保険など様々な種類があり、個人で加入するよりも保険料が割安になっているケースが多く見られます。
- 慶弔金や見舞金: 従業員本人や家族の病気、ケガ、死亡などの際に、会社から一時金が支給される制度です。
これらの会社の保障内容は、就業規則や福利厚生に関する資料、健康保険組合のウェブサイトなどで確認することができます。
公的制度とはどのようなものか
私たちは皆、様々な公的制度によって支えられています。病気やケガ、障害、失業、老齢、死亡といったリスクに対して、国が一定の保障を提供しています。民間の保険を検討する際には、これらの公的制度による保障を理解しておくことが不可欠です。
主な公的制度には以下のようなものがあります。
- 健康保険: 医療機関を受診した際の医療費の自己負担割合を軽減する制度です。現役世代であれば原則3割負担となります。
- 高額療養費制度: 同じ月にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超えた分の払い戻しを受けられる制度です。これにより、高額な医療費がかかっても、家計への影響が軽減されます。この自己負担限度額は、所得によって異なります。
- 傷病手当金: 病気やケガで会社を休み、給与の支払いが受けられなかった場合に、健康保険から支給される手当金です。最長で1年6ヶ月間支給されます。
- 障害年金: 病気やケガによって生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金です。
- 遺族年金: 国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった場合に、遺族に支給される年金です。
これらの公的制度による保障の具体的な内容や受給要件は、厚生労働省や日本年金機構のウェブサイトなどで確認できます。
民間の保険との重複を見極める考え方
会社の保障や公的制度を知ることは、現在加入している民間の保険契約を見直す上で非常に役立ちます。これらの保障が、民間の保険で備えようとしているリスクを既にカバーしている場合、その分の民間の保険は不要である、あるいは保障額を減額できる可能性があります。
重複を見極める際の基本的な考え方は、それぞれの保障が「何のために」「どのような条件で」「いくら」「いつまで」支払われるのかを明確にすることです。
- 保障の目的を確認する: 会社の保障や公的制度が、具体的にどのような事態(例:医療費の自己負担、働けない期間の収入減、死亡時の家族の生活費など)に対する保障なのかを確認します。
- 保障内容を比較する: 加入している民間の保険の保障内容(例:医療費、入院給付金、死亡保険金、就業不能給付金など)と、会社の保障や公的制度による保障内容を比較します。
- 保障額と期間を確認する: それぞれの保障で、いくらの給付や保険金が、どのような条件で、いつまで受け取れるのかを確認します。特に、一時金なのか、あるいは毎月継続して受け取れるものなのか、支給期間に上限があるのかなどを把握することが重要です。
重複を確認するためのチェックポイント
具体的な確認を進めるためのチェックポイントを以下にまとめました。多忙な方でも、まずはここから確認を始めてみましょう。
- 勤務先の就業規則や福利厚生の資料を確認する: 健康診断の案内などと一緒に配布される資料の中に、会社の保障制度に関する情報が記載されていることがあります。特に、病気やケガ、死亡時の規定、慶弔金や見舞金について確認します。
- 加入している健康保険組合のウェブサイトを確認する: 付加給付制度の有無や、その具体的な内容(自己負担限度額、対象となる医療費など)を確認します。
- 給与明細を確認する: 毎月控除されている健康保険料や厚生年金保険料に基づいて、自身が加入している公的制度を確認します。
- 公的制度の情報を確認する: 厚生労働省や日本年金機構などの公的機関が提供するウェブサイトやパンフレットで、高額療養費制度、傷病手当金、障害年金、遺族年金などの概要を確認します。自身の現在の収入や家族構成の場合に、どの程度の保障が見込めるかを大まかに把握しておくと良いでしょう。
- 自身の保険証券を確認する: 加入している民間の保険契約の保険証券を取り出し、それぞれの保障内容(保障の種類、保障額、給付条件、保険期間など)を改めて確認します。
これらの情報を整理することで、「この病気で入院した場合、公的制度で〇〇円、会社の保障で△△円がカバーされそうだから、民間の医療保険でさらに□□円あれば十分だろう」といったように、より具体的に必要な保障額や期間を検討することが可能になります。
重複が見つかった場合の考え方
会社の保障や公的制度による保障と、民間の保険の保障に重複が見つかった場合でも、すぐに保険を解約する必要があるとは限りません。
例えば、公的制度や会社の保障だけではカバーしきれない部分、より手厚く備えたいと考えるリスク、あるいは公的制度の改正リスクなどに備えるために、あえて重複部分を残しておくという考え方もあります。また、民間の保険ならではのサービス(例:セカンドオピニオンの手配サービスなど)に価値を感じている場合もあるでしょう。
大切なのは、ご自身の現在のライフステージや家族構成、収入、将来の目標、そして万が一の事態が発生した場合にどの程度の貯蓄で対応できるのかといった状況を踏まえ、何に、どこまで備えたいのかをしっかりと考えることです。その上で、会社の保障や公的制度による保障を土台として、民間の保険で不足する部分を補うという視点を持つことが、無駄なく効率的にリスクに備えることに繋がります。
まとめ
現在の保険契約が必要か不要かを見極めるためには、加入している民間の保険だけでなく、会社の保障制度や公的制度による保障を理解することが重要な出発点となります。これらの保障は、病気やケガ、万が一の場合に私たちを支えてくれるセーフティネットであり、民間の保険で備えるべき範囲を検討する上で欠かせない要素です。
まずは、ご自身の会社の保障内容と公的制度の概要を確認し、加入中の保険の保障内容と比較してみてください。このプロセスを通じて、ご自身の状況に合った保険の形が見えてくるはずです。ご自身の状況に合わせて保険を見直す際は、自己判断が基本となります。必要に応じて、信頼できる情報を基に検討を進めることをお勧めします。