漠然とした保険の不安を解消:見直しを始める前に確認すべきこと
はじめに
多くの人が、加入している保険契約について、漠然とした不安を抱えているかもしれません。「この保険は本当に自分に必要なのか」「保険料は適切なのか」「もっと良い保険があるのではないか」といった疑問は、誰にでも起こりうるものです。特に、保険の専門的な知識が少なく、忙しい日々の中で契約内容をじっくり確認する時間がないという方にとっては、その不安はさらに大きくなることでしょう。また、過去に保険会社に勧められるまま加入した経験がある場合、現在のライフスタイルや状況に合っているかどうかも分からず、そのままになっているケースも見受けられます。
保険の見直しは、単に保険を解約したり、新しい保険に加入したりすることだけを指すのではありません。見直しとは、ご自身の現状と将来を見つめ直し、それに合わせて保険による備えが適切であるかを判断するプロセスです。そして、このプロセスを始めるにあたり、まず最初に行うべき重要なステップがあります。それは、「現状を把握すること」です。
この記事では、漠然とした保険の不安を解消し、見直しをスムーズに進めるために、見直しを始める前に確認しておきたい基本的なポイントについて解説します。特定の保険商品や会社を推奨するものではなく、あくまでご自身で判断するための材料としてお役立ていただければ幸いです。
なぜ「見直しを始める前」の確認が重要なのか
保険の見直しを考え始めたとき、すぐに「どの保険が良いか」と情報収集を始める方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その前にご自身の現状を正確に把握することが、見直しを成功させる上で最も重要です。なぜなら、現状が分からなければ、何が過剰で何が不足しているのか、そもそも見直しが必要なのかどうかの判断ができないためです。
闇雲に情報を集めても、それがご自身の状況に合っているかどうかを判断する基準がなければ、かえって混乱を招くだけです。まずは足元をしっかりと確認し、ご自身にとって何が必要で何が不要なのかを考えるための土台を築くことから始めましょう。
見直しを始める前に確認すべき3つの基本ポイント
保険の見直しを進める上で、まず確認しておきたい基本的なポイントを3つご紹介します。これらのポイントを整理することで、ご自身の保険に対する考え方が明確になり、次の一歩が見えてくるはずです。
ポイント1:現在の保険契約内容を把握する
まずは、現在加入している保険契約がどのような内容になっているのかを確認します。保険会社から送付される「保険証券(ほけんしょうけん)」や「ご契約内容のお知らせ」といった書類を手元に用意しましょう。これらの書類には、重要な情報が記載されています。
確認すべき主な内容は以下の通りです。
- 保険の種類: 生命保険、医療保険、がん保険、就業不能保険、学資保険など、どのような種類の保険に加入しているか。
- 保険金額(保障額): 病気や死亡などで保険金が支払われる場合に、いくら受け取れるか。例えば、死亡保険なら「死亡保険金5,000万円」、医療保険なら「入院日額1万円」などです。
- 保険期間: いつまで保障が続くか。終身(一生涯)なのか、あるいは〇歳まで、〇年間といった期間が決まっているのか。
- 保険料: 毎月または毎年、いくら保険料を支払っているか。
- 特約(とくやく): 基本となる保障に加えて、どのようなオプション(特定の病気への備え、先進医療への備えなど)を付けているか。
これらの情報を書き出したり、整理したりすることで、現在のご自身がどのようなリスクに対して、どのくらいの期間、いくらの備えをしているのかが明らかになります。もし保険証券が見つからない場合は、保険会社に連絡して再発行を依頼するか、契約内容を確認する方法を問い合わせてみましょう。
ポイント2:ご自身の現在の状況を整理する
保険は、ご自身のライフスタイルや経済状況に合わせて備えるものです。現在の状況を整理することは、必要な保障額や保障内容を考える上で不可欠です。
整理しておきたい主な状況は以下の通りです。
- 家族構成: ご自身、配偶者、お子様の有無や年齢、ご両親の状況など。扶養している家族がいるかどうかは、必要な保障額を考える上で非常に大きな要素となります。
- 住居: 持ち家か賃貸か。持ち家の場合、住宅ローンの残債はどのくらいか。住宅ローン契約時に団体信用生命保険(だんたいしんようせいめいほけん)に加入しているかどうかも確認が必要です。
- 働き方と収入: 会社員、公務員、自営業など。安定した収入があるか、共働きか。万一働けなくなった場合の収入への影響を考えます。
- 資産状況: 預貯金や投資などの資産、奨学金やその他の借入金といった負債の状況。もしもの時に、これらの資産でどこまで対応できるかを考えます。
- 会社の保障や公的制度: 勤務先の福利厚生で加入している保険や保障制度、健康保険や厚生年金保険などの公的制度による保障内容を把握します。これらは保険を考える上で非常に重要であり、重複を避ける視点も生まれます。
これらの情報を整理することで、ご自身やご家族が抱えるリスクの種類や大きさが具体的に見えてきます。
ポイント3:将来のライフプランを考える
保険は、将来起こりうるリスクに備えるためのものです。今後起こりうるライフイベントを予測し、それに伴う経済的な変化を考えることも重要です。
考えておきたい将来のライフプランの例です。
- お子様の進学(高校、大学など)
- 住宅の購入やリフォーム
- 独立や転職、定年退職
- 親の介護
これらのイベントが「いつ頃、何が起こるか」を具体的に考えることで、それに合わせて必要な資金や備えが変わってくることが理解できます。完璧な予測は難しくても、ざっくりとしたイメージを持つことが大切です。
確認した情報をどう活用するか:考え方のヒント
ポイント1〜3で確認・整理した情報は、現在加入している保険がご自身の現状や将来のプランに対して適切かどうかを判断するための貴重な材料となります。
例えば、ポイント1で「死亡保険金が5,000万円」という契約内容を確認し、ポイント2・3で「妻と子供が2人(まだ小さい)」「住宅ローンがあと3,000万円ある」「妻は専業主婦」といった状況や将来像を整理した場合、もしもの時に5,000万円の死亡保険金で、残された家族の生活費や教育費、住宅ローン返済などを賄えるかを考えることができます。逆に、子供が既に独立し、住宅ローンも完済しているにも関わらず、多額の死亡保険金がついた契約をそのまま続けている場合、その保障は現在の状況に対して過剰である可能性を示唆しています。
また、医療保険について「入院日額5,000円」という契約内容を確認し、ご自身の状況(ポイント2)として「会社の健康保険で入院時の医療費負担は一定額で済む(高額療養費制度)」といった公的制度による保障も把握していれば、入院日額5,000円で十分なのか、あるいはもう少し手厚い保障が必要なのかを考える材料になります。
漠然とした不安は、「分からないこと」から生まれることが多いものです。ご自身の保険契約、そしてご自身の現状と将来について、一つずつ確認し整理することで、「分からないこと」が「把握できること」に変わり、漠然とした不安は具体的な検討課題へと変化していきます。
まとめ
保険の見直しは、ご自身の人生のプランニングと深く関わる大切なプロセスです。そして、その第一歩は、現在の状況を正確に把握することにあります。
今回ご紹介した「現在の保険契約内容」「ご自身の現在の状況」「将来のライフプラン」という3つの基本ポイントを確認・整理することで、ご自身の保険に対する考え方がクリアになり、見直しが必要かどうかの判断や、もし見直しを行う場合の方向性が見えてくるはずです。
忙しい中で時間を取るのは大変かもしれませんが、まずはこれらのポイントだけでも確認してみる価値は大きいでしょう。焦る必要はありません。ご自身のペースで、一つずつ確認を進めてみてください。それが、ご自身にとって本当に必要な保険による備えを見極めるための確かな一歩となるでしょう。