保険の見直しを始める前に:契約内容を自分で確認・整理する方法
はじめに
加入している保険契約が現在の自分に合っているのか、漠然とした不安を感じることは少なくないかもしれません。特に、ライフステージの変化や働き方の変化などを経験すると、保険を見直す必要性を感じる機会が増えるものです。しかし、「いざ見直そうと思っても、何から手をつければ良いか分からない」「そもそも、自分がどんな保険に加入しているのかよく把握できていない」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
保険の見直しは、ご自身の将来設計や万一の事態への備え方を考える上で非常に重要なプロセスです。そして、その最初の一歩として最も大切なのが、「現在加入している保険契約の内容を正確に把握・整理すること」です。ご自身の契約内容をしっかりと理解できていなければ、何が必要で何が不要なのかを適切に判断することは困難です。
この記事では、保険の見直しを始めるにあたり、ご自身で加入中の保険契約内容を確認・整理するための具体的な方法と、確認すべきポイントを解説します。
なぜ、まず契約内容の確認・整理が必要なのか
保険の見直しを検討する際、現在の契約内容が「出発点」となります。現在の保障がどのようなもので、保険料はいくら支払っており、いつまで続くのかといった基本情報を正確に把握せずに、新たな保険を検討したり、契約を変更したりすることは適切ではありません。
- 現状把握の重要性: ご自身の現在の保険契約が、どのようなリスクに対して、どの程度の保障を提供しているのかを正確に知ることで、保障が不足しているのか、あるいは過剰になっているのかを判断するための基礎ができます。
- 重複や不足の発見: 複数の保険に加入している場合、それぞれの契約内容を整理することで、保障内容が重複している部分や、逆に全く備えられていないリスク領域がないかなどを発見しやすくなります。
- 公的保障や会社の福利厚生との兼ね合い: 日本には健康保険や公的年金などの公的な保障制度があり、また会社員の方であれば勤務先の福利厚生として団体保険などがある場合もあります。これらの保障内容も踏まえて、民間の保険でどこまで備えるべきかを考えるためにも、まずは民間の保険契約内容を正確に把握することが不可欠です。
ご自身で契約内容を確認・整理するためのステップ
では、具体的にどのような手順で、契約内容を確認・整理すれば良いのでしょうか。
ステップ1:必要な書類を用意する
まずは、ご自身の加入している保険契約に関する書類を一箇所に集めましょう。主に以下の書類が必要となります。
- 保険証券: 保険証券は、契約の種類、被保険者(保障の対象となる方)、保険期間、保険料、保障内容、保険金額などが記載されている最も重要な書類です。
- 約款: 約款(やっかん)は、契約の詳細なルールブックのようなものです。どのような場合に保険金が支払われるのか、どのような場合に支払われないのかなどが細かく定められています。保険証券だけでは分からない詳細を確認する際に必要になります。
- ご契約のしおり: 約款の内容をより分かりやすく解説した書類です。
- その他: 保険会社から送られてくる契約内容変更のお知らせ、保険料払込証明書なども参考になる場合があります。
もし保険証券が見当たらない場合は、加入している可能性のある保険会社に問い合わせて、再発行または契約内容通知書の発行を依頼する必要があります。
ステップ2:各保険契約の主要な内容を確認する
集めた保険証券や書類をもとに、各保険契約の主要な内容を確認し、必要に応じてメモや一覧表を作成しましょう。確認すべき主な項目は以下の通りです。
- 保険の種類: 生命保険、医療保険、がん保険、終身保険、定期保険、養老保険など、どのようなタイプの保険かを確認します。
- 被保険者: 誰の病気や死亡、ケガなどに対して保障される契約かを確認します(ご自身か、配偶者か、お子様かなど)。
- 保険期間: いつまで保障が続く契約かを確認します(例:終身、〇年更新、〇歳までなど)。
- 保険料払込期間: いつまで保険料を支払う必要があるかを確認します(例:終身払込、〇歳まで払込、〇年払込など)。
- 保険料: 月額または年額の保険料を確認します。
- 主契約の内容:
- 死亡保険金(死亡した際にいくら支払われるか)
- 高度障害保険金(高度障害状態になった際にいくら支払われるか)
- 入院給付金(入院1日あたりいくら支払われるか、支払い限度日数など)
- 手術給付金(手術の種類に応じていくら支払われるか)
- 特定の病気(がん、心疾患、脳卒中など)に対する一時金や給付金
- 特約の内容: 主契約に付加されている特別な保障(例:先進医療特約、特定疾病特約、リビング・ニーズ特約など)とその保障内容を確認します。
- 受取人: 保険金・給付金を受け取る人が誰になっているかを確認します。
- 解約返戻金: 貯蓄性のある保険(終身保険など)の場合、現時点での解約返戻金がいくらあるかを確認します(証券や契約内容通知書に記載されている場合があります)。
ステップ3:複数の保険契約を一覧にまとめる
複数の保険に加入している場合は、各契約の情報を一覧形式で整理すると全体像が把握しやすくなります。簡単な表を作成し、契約ごとに上記の主要項目を記入していくと良いでしょう。
| 保険会社名 | 保険種類 | 被保険者 | 保険期間 | 払込期間 | 保険料(月払) | 主な保障内容 | 特約 | | :--------- | :------- | :------- | :------- | :------- | :----------- | :----------- | :--- | | A生命 | 終身保険 | 本人 | 終身 | 65歳まで | 〇〇円 | 死亡〇〇円 | - | | B医療 | 医療保険 | 本人 | 〇〇歳まで | 〇〇歳まで | △△円 | 入院△△円/日 | 先進医療 | | Cがん | がん保険 | 本人 | 終身 | 終身 | □□円 | がん一時金□□円 | - |
このように一覧にすることで、自分が合計でどれくらいの保障を持っていて、毎月いくら保険料を支払っているのか、保障期間がいつまでなのかなどが視覚的に分かりやすくなります。
ステップ4:公的保障や会社の福利厚生を確認する(簡易的)
併せて、ご自身が受けられる可能性のある公的な保障(健康保険の高額療養費制度など)や、勤務先の福利厚生で加入している団体保険などについて、概要を確認しておきましょう。これにより、民間の保険でどこまで備えるべきか、より現実的な判断ができるようになります。
確認・整理の次のステップへ
ご自身の保険契約内容を正確に確認・整理することは、保険の見直しにおける最も重要な第一歩です。このステップを終えることで、「自分がどのような保険に加入しているのか」という「現在地」が明確になります。
確認・整理した情報をもとに、現在の保障内容が、ご自身のライフステージ(家族構成、収入、住宅状況など)や将来設計(教育資金、老後資金など)、そして公的保障や会社の福利厚生などを考慮した上で、必要十分なものであるかを次に検討していくことになります。保障が不足していると感じる場合、逆に過剰ではないか、あるいは似た保障内容の保険に複数加入していないかなどを判断するための大切な材料となります。
まとめ
保険の見直しは、ご自身の人生における大切なリスク管理の一つです。多忙な日々の中で保険について考える時間を取ることは難しいかもしれませんが、まずはご自身の保険契約がどうなっているのかを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事でご紹介した方法で、ご自身で契約内容を確認・整理することで、現在の保険に対する漠然とした不安が少しでも解消され、今後の見直し検討に向けた確かな一歩となることを願っております。具体的な見直し方法や、必要か不要かの判断基準については、また別の機会に解説いたします。