今の保険料は自分にとって適切か:支出と保障のバランスを判断する視点
多くの人が加入している保険ですが、「毎月(あるいは毎年)支払っている保険料が、自分にとって本当に必要な金額なのかよく分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。保険会社から勧められるまま加入したり、特に見直すことなく時間が経過したりするうちに、現在の保険料がご自身のライフステージや家計の状況に合っているのか、漠然とした不安を抱くことは少なくありません。
ここでは、ご自身の保険料が現在の状況に適切かどうかを判断するための考え方として、「支出と保障のバランス」という視点に焦点を当て、その見極め方について解説します。
保険料の適正さを判断するための基本的な考え方
保険料が適切かどうかを考える際には、「保険料」という支出単体を見るのではなく、その保険料によってどのような「保障」が得られているのか、そしてその保障が現在のご自身の家計状況や将来の計画に対してバランスが取れているか、という視点が重要になります。
支払う保険料は、将来起こりうる万が一のリスク(死亡、病気、ケガなど)が発生した際に、経済的な困難を乗り越えるための資金を準備するために充てられます。つまり、保険料は「安心を買うためのコスト」と言えます。このコストが、得られる安心(保障)に見合っているか、そしてそのコストを支払い続けることが家計に無理なく可能かを判断することが、保険料の適正さを考える上で重要となります。
支出と保障のバランスを見極めるチェックポイント
ご自身の保険について、支払っている保険料と得られる保障のバランスが取れているかを確認するために、以下の点をチェックしてみましょう。
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現在の家計における保険料の負担度
- 毎月(あるいは毎年)支払っている保険料の合計額は、手取り収入に対してどのくらいの割合を占めているでしょうか。家計に占める保険料の割合が過度に高い場合、他の生活費や貯蓄、将来のための資産形成を圧迫していないかを確認する必要があります。
- 無理のない範囲で保険料を支払えているか、継続的に支払い可能かという点は、保険契約を維持できるかどうかに直結するため、非常に重要な視点です。
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万が一の際に「必要な保障額」はいくらか
- もしご自身に万が一のことが起こった場合、残されたご家族(配偶者や子どもなど)が今後の生活を送るために、どれくらいの資金が必要になるかを考えてみましょう。これを「必要保障額」と呼びます。
- 必要保障額は、遺された家族の生活費、子どもの教育費、住宅ローンの残債、葬儀費用などを考慮して算出します。一方で、遺族年金などの公的な保障や、会社の福利厚生、ご自身の貯蓄や資産で賄える部分も考慮に入れる必要があります。
- 必要な保障額を具体的に把握することで、現在加入している保険で準備できている保障額が、その必要額に対して多すぎるのか、少なすぎるのか、あるいは適切なのかを判断する材料になります。
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加入している保険の「保障内容」と「期間」
- 支払っている保険料に対して、どのような保障が得られているか(例:死亡保険金、医療保険の給付金額、特定疾病になった場合の給付金など)を具体的に確認しましょう。保険証券や契約内容を確認することが第一歩です。
- 保障の期間(終身か、一定期間か)も保険料に大きく影響します。必要な保障はライフステージによって変化するため、現在の保障期間がご自身の状況に合っているか確認しましょう。例えば、子どもが独立した後に、子どもの教育費をカバーするための大きな死亡保障が不要になるなど、状況に応じた変化が考えられます。
- 保障内容がご自身の現在のリスクに合っているか、あるいは将来起こりうるリスクに対して過不足がないかを確認することも、バランスを見極める上で重要です。
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公的な保障や会社の福利厚生でカバーされる範囲
- 日本の社会保障制度には、遺族年金や高額療養費制度など、万が一の際や病気・ケガをした際に経済的な支援をしてくれる様々な仕組みがあります。また、会社員であれば、傷病手当金や会社の弔慰金・見舞金制度など、独自の福利厚生がある場合もあります。
- これらの公的な保障や会社の福利厚生でカバーされる範囲を把握することで、民間の保険で準備すべき金額(必要保障額)をより正確に算出することができます。公的保障などで十分カバーできる部分にまで手厚い保険をかけている場合、保険料の負担が過剰になっている可能性があります。
見直しのきっかけとなる「支出や収入の変化」
保険の「支出と保障のバランス」は、一度取れたら終わりというものではありません。収入や支出の状況は、昇進や転職による年収の変化、住宅ローンの完済、子どもの独立、親の介護費用の発生など、様々なライフイベントや状況の変化によって常に変動します。
このような変化があった際には、前述のチェックポイントを改めて確認し、現在の保険料と保障内容が、最新の家計状況や必要保障額に合っているかを見直す良い機会となります。特に、以前よりも経済的な余裕ができた場合は、保障をさらに手厚くすることも検討できますし、逆に家計が厳しくなった場合は、保障内容を見直して保険料負担を減らすことを考える必要が出てくるかもしれません。
まとめ
ご自身の支払っている保険料が適切かどうかを判断するためには、単に保険料の金額だけを見るのではなく、その保険料で得られる保障が、現在の家計状況や将来の計画、そして公的保障などを踏まえた「必要な保障額」に対してバランスが取れているかという視点を持つことが大切です。
まずは、ご自身の保険契約の内容、現在の収入・支出状況、そして公的な保障がどのようなものかを確認することから始めてみましょう。これらの情報を整理することで、漠然とした不安が解消され、ご自身の保険について適切な判断を下すための第一歩を踏み出すことができるはずです。ご自身の状況に合わせて、バランスの取れた保険契約を維持していくことの重要性をご理解いただければ幸いです。