加入中の保険契約、合計保障額は適切か:必要額を見極めるための視点
現在加入している保険契約について、ふと「これで本当に十分だろうか」「もしかしたら多すぎるのではないか」といった疑問や不安を抱くことがあるかもしれません。複数の保険に加入している場合、それぞれの保障内容や保険金額は把握していても、全ての契約を合計した保障額が自身の現在の状況に対して適切なのかを判断するのは難しいと感じるかもしれません。
この記事では、ご自身の保険契約の合計保障額が適切であるかを見極めるための考え方と視点を提供します。特定の保険商品や見直し方法を推奨するものではなく、あくまでご自身で判断を進める上での材料としてご活用ください。
1. 現在の合計保障額を把握する
まず、ご自身が現在加入している保険契約の全体像を把握することから始めます。複数の保険会社や商品に加入している場合、全ての保険証券(契約内容が記載された書類)を手元に集め、それぞれの契約内容を確認します。
確認するべき主な項目は以下の通りです。
- 保険の種類: 生命保険、医療保険、がん保険、就業不能保険など、どのような種類の保険に加入しているかを確認します。
- 契約者、被保険者、受取人: それぞれ誰になっているかを確認します。特に、万が一のことがあった場合に保険金を受け取る「受取人」が、現在の家族構成や意向と合っているかを確認することは重要です。
- 保険期間: 保障がいつまで続く契約かを確認します。終身(一生涯)保障なのか、特定の年齢や期間で満了する定期保障なのかで、将来的な保障の考え方が変わります。
- 保険金額(保障額): 死亡保険であれば死亡保険金額、医療保険であれば入院給付金の日額や手術給付金の金額など、それぞれのリスクに対していくらの保障が得られるのかを確認します。
複数の契約で死亡保険に加入している場合、それぞれの死亡保険金額を合計することで、万が一の際に家族が受け取る保険金の合計額が分かります。医療保険についても、複数の医療保険や特約に加入している場合は、入院給付金の日額が重複していないか、合計でいくらになるかなどを確認できます。
この段階では、細かな保障内容まで完璧に理解する必要はありません。まずは、どのような保険に加入していて、それぞれのリスクに対して合計でどのくらいの「金額」で備えているのかを大まかに把握することを目標としてください。
2. 必要保障額の考え方を知る
現在加入している保険契約の合計保障額が把握できたら、次に考えるべきは「では、自分にはどれくらいの保障が必要なのか」ということです。この「必要保障額」は、ご自身のライフステージ、家族構成、収入、資産状況、そしてどのようなリスクに備えたいかによって大きく異なります。
特に、一家の家計を支える方にとって重要な「死亡時の必要保障額」について、その考え方の基本をご紹介します。これは、ご自身に万が一のことがあった場合に、遺された家族が生活していく上で必要となる資金から、既に準備できている資金(公的な給付や貯蓄など)を差し引いて算出されると考えられます。
具体的な計算要素としては、以下のようなものが挙げられます。
- 今後かかる生活費: 遺された家族が、お子様が独立するまでの期間や、配偶者が働けなくなる可能性などを考慮して、生活していく上で必要となる費用。
- 教育資金: お子様の学校や進路に応じて必要となる教育にかかる費用。
- 住居関連費用: 住宅ローンの残債や、賃貸の場合は家賃など。団体信用生命保険に加入している場合は、死亡時に住宅ローンが完済されるため、その分は必要保障額から差し引いて考えます。(団体信用生命保険とは、住宅ローン契約者が死亡または高度障害になった場合に、保険金でローン残債が完済される仕組みです。)
- 葬儀費用など整理資金: 万が一の際に一時的に必要となる費用。
これらの「今後必要となる資金」から、以下の「準備できる資金」を差し引いた金額が、死亡時の必要保障額の目安となります。
- 遺族年金などの公的な給付: 国から支給される年金制度です。加入状況(会社員・公務員か自営業・フリーランスか)や遺族の構成によって支給額は異なります。ご自身の状況におけるおおよその金額を確認することが重要です。
- 会社の弔慰金や退職金: 勤務先の規定に応じて支給される可能性があります。
- 現在の貯蓄や資産: 預貯金、株式、不動産など、万が一の際に活用できる資産。
- 配偶者の収入: 遺された配偶者が今後も働く場合に得られる収入。
これらの要素を全て正確に計算するのは複雑ですが、「万が一の際に、残された家族がどれくらいの期間、どのような生活を送るために、合計でどれくらいの資金が必要になりそうか」という大まかなイメージを持つことが、必要保障額を考える上で有効です。
3. 合計保障額と必要保障額を比較する
ステップ1で把握した現在の保険契約の合計保障額と、ステップ2で考えたご自身の状況における必要保障額の目安を比較検討します。
- 合計保障額が必要保障額を大きく上回っている場合: 現在加入している保険による備えが、ご自身の状況で必要と考えられる金額よりも相当に大きい可能性があります。保険料は、保障額に比例して高くなる傾向があります。必要以上の保障に対して保険料を支払っている状況であれば、保険料負担が家計を圧迫していないか、その分の資金を貯蓄や他の目的に活用できないかなどを検討する視点が生まれます。
- 合計保障額が必要保障額と同程度、あるいは下回っている場合: 現在の保険による備えが、必要と考えられる金額に対して適切か、あるいは不足している可能性があります。ただし、必要保障額はあくまで概算であり、また保険以外の備え(貯蓄や公的制度など)で十分に対応できると判断できるのであれば、必ずしも保険による保障を手厚くする必要はありません。ご自身の貯蓄計画や、万が一の場合の家計のシミュレーションなども含めて総合的に判断することが重要です。
4. 判断を進める上での留意点
保険契約の合計保障額と必要保障額の比較は、見直しを検討する上での重要な視点の一つですが、判断は慎重に行う必要があります。
- 健康状態の変化: 現在は健康であっても、過去に病気を経験していたり、年齢を重ねることで、将来的に新たな保険加入や保障額の増額が難しくなる可能性があります。現在の保険契約を安易に解約したり減額したりすると、いざという時に必要な保障を得られなくなるリスクも考慮する必要があります。
- 保険の種類による違い: 死亡保険と医療保険では、必要とされる保障の考え方が異なります。死亡保障額は、万が一の際の家族の生活を支えるための金額として、医療保障は、病気やケガによる医療費負担や収入減を補うための金額として考えます。それぞれのリスクに対して、現在の備えが適切かを個別に検討することも重要です。
- 将来のライフイベント: 今後の昇進や転職による収入の変化、お子様の独立、定年退職など、将来起こりうるライフイベントによって、必要となる保障額は変化します。短期的な視点だけでなく、将来を見据えた計画的な見直しが望ましいと言えます。
- 契約内容の詳細: 同じ「死亡保障1000万円」でも、保険期間が終身なのか定期なのか、貯蓄機能が付いているのかいないのかなどで、保険料や契約の持つ意味合いは大きく異なります。合計保障額だけでなく、個々の契約内容を再度確認することも重要です。
まとめ
ご自身の保険契約の合計保障額を確認し、現在の状況における必要保障額を考えることは、現在の保険契約が適切であるかを見極めるための有効なアプローチです。全ての保険契約の内容を把握し、公的な保障や自己資金による備えも考慮に入れた上で、ご自身にとって必要な保障額の目安を立てることから始めてみてください。
この作業を通じて、加入している保険による保障が「多すぎるのか」「足りないのか」、あるいは「ちょうど良いのか」について、客観的な視点を持つことができるでしょう。この視点が、今後の保険契約の見直しや、より良い家計管理を進めるための一助となれば幸いです。ご自身の状況に合わせた最適な備えについて、判断を進めるための一歩としてご活用ください。