昔加入した保険、今の自分に必要か:契約の目的と現状を比較する視点
現在の保険契約に疑問を感じる時
多くの方が、過去に加入した保険契約について、現在の自分に合っているのだろうか、本当に必要なのだろうかと、漠然とした疑問や不安を感じることがあるかもしれません。保険は、加入時の状況や将来予測に基づいて契約されます。しかし、私たちの人生は時間の経過とともに様々な変化を経験します。家族構成、収入、働き方、健康状態、住まいなど、多岐にわたる変化が起こり得ます。これらの変化は、加入時の保険契約が現在の状況に適合しているかどうかを見直すきっかけとなります。
本記事では、過去に加入した保険契約が現在の自分にとって必要か不要かを判断するための手がかりとして、保険加入時の「目的」と現在の「状況」を比較するという視点をご紹介します。
保険加入時の目的を振り返る
まず、ご自身がその保険に加入された当時のことを思い出してみましょう。なぜその保険に加入する必要があると感じたのでしょうか。
- 当時の状況: どのようなライフステージだったでしょうか。独身だったか、結婚していたか、子供はいたか。子供の年齢や人数はどうだったか。収入はどのくらいだったか。健康状態はどうか。
- 当時の将来予測: 将来に対してどのような希望や不安を抱いていたでしょうか。子供の教育資金をどのように準備しようと考えていたか。住宅購入を予定していたか。老後資金についてどのように考えていたか。
- 保険で備えようとしたリスク: 万が一の時に、どのような事態に備えたいと考えたでしょうか。一家の大黒柱に万が一のことがあった場合の家族の生活費、病気やケガで入院・手術が必要になった場合の医療費、これらのリスクに対して、保険でどれくらいの金額を用意しておきたいと思ったか。
保険証券や契約関連書類を確認することで、加入時期やその頃の保障内容が分かります。これらの情報を基に、当時のご自身の状況や考えを思い出すヒントとしてください。例えば、子供が生まれたタイミングで死亡保障を増やしているかもしれませんし、住宅ローンを組む際に特定の保険に加入しているかもしれません。
現在の状況を確認する
次に、現在の状況を具体的に整理します。
- 現在のライフステージ: 家族構成(配偶者の有無、子供の独立、両親との同居など)、働き方(会社員、自営業、共働きかどうか)、収入、支出状況。
- 資産状況: 預貯金や投資、不動産などの資産がどのくらいあるか。住宅ローンの残高や、団体信用生命保険への加入状況。
- 健康状態: 現在の健康状態や、既往歴。
- 保険以外の備え: 会社の福利厚生制度(慶弔金、傷病手当金、退職金制度など)、公的保障制度(健康保険の高額療養費制度、遺族年金、障害年金など)の内容。
これらの情報を把握することで、現在の生活においてどのようなリスクがあり、それに対してどの程度の経済的な備えが必要なのかが見えてきます。
加入時の目的と現在の状況のミスマッチを探す
過去の目的と現在の状況を比較することで、保険契約が現在の自分にとって必要か不要かを見極める手がかりが得られます。
例えば、以下のようなミスマッチがないか確認してみましょう。
- 子供のための保障: 加入時は小さかった子供も成人し、独立した。しかし、子供の生活費や教育資金を目的とした死亡保障が手厚いままになっている。
- 住宅ローンに関する保障: 住宅ローンを完済した、あるいは団体信用生命保険に加入しているのに、死亡保障が十分に残っている。
- 貯蓄性の保険: 資産形成のために加入した貯蓄型保険について、現在の資産状況や他の貯蓄・投資状況を踏まえると、継続する必要性が薄れている可能性がある。
- 医療保障: 若く健康な時に加入した医療保険について、その後の健康状態の変化や、現在の高額療養費制度の内容を踏まえた上で、保障内容が適切か。あるいは、会社の福利厚生で医療費負担が軽減される場合、過剰な保障になっていないか。
- 就業不能保障: 加入時とは働き方や収入が大きく変化した場合、就業不能時の保障額が現在の生活レベルに見合っているか。
これらのミスマッチは、保険契約が現在のリスクや経済状況に対して、過剰になっている、あるいは不足している可能性を示唆しています。
自己判断のための視点
保険契約の必要性は、個々の状況によって異なります。一律に「この保険は必要」「この保険は不要」と判断できるものではありません。
- 備えるべきリスクの再確認: 現在の自分が、万が一の際に経済的に困窮する可能性があるリスクは何でしょうか。そのリスクが発生した場合、どれくらいの金額が必要になるでしょうか。
- 自助努力と公的・会社の制度: そのリスクに対して、現在の預貯金や資産、そして公的保障や会社の福利厚生でどこまで対応できるでしょうか。
- 保険の役割: 自己資金や他の制度では対応できない部分を、保険でどのようにカバーするかを考えます。保険は、自分で負いきれない大きなリスクに備えるための有効な手段です。
過去に加入した保険契約が、現在の自分にとって、本当に備えるべきリスクに対して適切に機能しているか、保険料とその保障内容のバランスが取れているか、という視点で判断することが重要です。
まとめ
昔加入した保険契約が現在の自分に必要か不要かを判断するためには、保険加入時の「目的」と現在の「状況」を比較することが有効な第一歩となります。当時の目的と現在の状況との間にミスマッチがないか確認することで、保険契約が現在のリスクや経済状況に対して適切かどうかを見極める手がかりが得られます。
もしミスマッチが見つかった場合でも、すぐに結論を出す必要はありません。現在の保険契約を見直す際には、解約だけでなく、保障額の減額や特約の解約、払済保険への変更など、いくつかの選択肢が存在します。
現在の保険契約が必要か不要かをご自身で判断するためには、まずは契約内容とご自身の状況を正確に把握することが大切です。その上で、備えるべきリスク、自己資金や他の制度での備え、そして保険の役割を総合的に考慮し、ご自身の状況に合った結論を導き出すことが求められます。