複数加入している保険契約:重複や無駄を見つける確認方法
はじめに:なぜ複数契約で重複が起こるのか
現在の保険契約が必要か不要かを見極める上で、複数加入している保険契約に重複や無駄がないかを確認することは重要なステップです。保険契約が一つだけであれば比較的シンプルですが、多くの方が人生の節目や勧誘などをきっかけに、複数の保険契約を結んでいる場合があります。
なぜ複数契約で重複が起こりやすいのでしょうか。一つの理由は、加入時期やきっかけが異なることです。例えば、若い頃に勧められた保険に加入し、結婚や子供の誕生などライフイベントのたびに、その時のニーズに合わせて別の保険に加入するといったケースが考えられます。また、以前加入した契約内容を十分に把握しないまま、新しい保険に加入してしまうこともあります。
複数契約している場合、保障内容が重複していたり、現在の状況に対して過剰な保障になっていたりする可能性があります。これは、本来支払う必要のない保険料を負担していることになり、家計に無駄が生じる原因となります。いざという時に、どの保険がどのように機能するのかが分かりにくくなるという側面もあります。
ご自身の保険契約に重複や無駄がないかを確認するために、まずは現状を整理することから始めましょう。
現在の保険契約をすべてリストアップする
重複や無駄を見つけるための最初のステップは、現在加入している保険契約をすべて洗い出し、リストアップすることです。ご自宅にある保険証券を探してみてください。保険会社から定期的に送られてくる契約内容のお知らせなども参考になります。
すべての保険証券や契約内容の控えが見つからない場合は、加入している可能性のある保険会社に問い合わせてみるのも一つの方法です。過去に利用した金融機関や保険代理店に記録が残っている場合もあります。
リストアップする際は、以下の項目を整理すると良いでしょう。
- 保険会社名
- 保険の種類(例:生命保険、医療保険、がん保険、個人年金保険など)
- 契約者名と被保険者名(誰に保険がかかっているか)
- 保険期間と保険料払込期間
- 現在の年間または月々の保険料
- 主な保障内容(例:死亡保険金額、入院日額、三大疾病になった場合の一時金など)
このように一覧にすることで、ご自身が現在どのような保険に加入しているのか、全体像を把握することができます。
保障内容を整理し、重複を確認する
次に、リストアップした各保険契約の具体的な保障内容を整理し、重複がないかを確認します。
同じリスクに対して、複数の保険で備えている場合があります。例えば、死亡保障、医療保障、がん保障などが重複しやすい項目です。
確認のために、簡単な表を作成してみることをお勧めします。縦軸に「保険契約(会社名・種類)」、横軸に「保障内容(死亡保険金額、入院日額、特定疾病一時金など)」を設定し、それぞれの契約でどのような保障がいくらついているのかを記入します。
| 保険契約(会社名/種類) | 死亡保険金額 | 入院日額 | がん診断一時金 | その他の保障 | 年間保険料 | | :---------------------- | :----------- | :------- | :------------- | :----------- | :--------- | | A生命/終身保険 | 1,000万円 | なし | なし | なし | 〇〇円 | | B損保/医療保険 | なし | 5,000円 | なし | 手術給付金 | △△円 | | C生命/がん保険 | なし | なし | 100万円 | 入院給付金 | □□円 | | D生命/収入保障保険 | 月10万円 | なし | なし | なし | ××円 | | ... | ... | ... | ... | ... | ... |
このような表を作成することで、同じリスク(例:死亡、入院、がん)に対して、複数の保険から合計でどれだけの保障が得られるのかが明確になります。
確認の際のポイントは以下の通りです。
- 死亡保障: 複数の生命保険や収入保障保険に加入している場合、合計の死亡保険金額や受け取り方法(一時金か年金か)を確認します。現在の家族構成や将来の必要資金に対して、合計額が過剰になっていないか検討します。
- 医療保障: 複数の医療保険に加入している場合、入院給付金の日額や支払限度日数、手術給付金などが重複していないか確認します。また、加入時期によって保障内容や支払条件が異なる場合があるため、注意が必要です。公的医療保険(高額療養費制度など)でカバーされる部分も考慮に入れます。
- 特定疾病保障: がん保険や三大疾病保険などに複数加入している場合、診断一時金や給付金の支払条件、金額が重複していないか確認します。初めてがんと診断された際にそれぞれから一時金が支払われるのか、それともどちらか一方からのみかなど、細部の条件も重要です。
- 保障期間: 同じ保障内容でも、契約によって保障期間が異なる場合があります。終身保障、〇歳まで保障、〇年間保障など、ご自身のライフプランと合っているか、または期間が重複していないか確認します。
これらの項目を一つずつ確認していくことで、想定以上の保障に加入していたり、同じリスクに二重に備えていたりする「重複」が見えてきます。
無駄がないか、現状との差を検討する
重複が見つかった場合だけでなく、現在の状況に対して保障内容が過剰になっていないか、「無駄」がないかも合わせて検討します。加入した時と現在では、ご自身の状況は変化しているはずです。
考慮すべき主な状況変化には以下のようなものがあります。
- 家族構成の変化: 結婚、子供の誕生・独立、親との同居など。必要な保障額は家族構成によって大きく変わります。
- 収入・資産の変化: 昇進による収入増加、退職、貯蓄額の増加、不動産の購入など。自己資金で備えられる部分が増えれば、保険で準備する額を減らせる可能性もあります。
- 健康状態の変化: 健康診断の結果、持病の有無など。健康状態によっては、特定の保障が必要なくなったり、逆に新しい保障への加入が難しくなったりします。
- 会社の福利厚生・公的保障: 会社の団体保険、遺族年金や障害年金などの公的保障内容を改めて確認します。これらの保障を手厚く受けられる場合、個人で加入している保険の必要性が低下することがあります。
これらの変化を踏まえ、先の表で整理した保障内容が、現在のそして将来の状況に対して適切であるかを検討します。例えば、子供が独立し、既に十分な貯蓄があるのに、多くの死亡保障がついた保険を複数契約している場合は、保障が過剰になっている可能性があります。
「現在の状況と将来の必要性に対して、本当に必要な保障は何か?」という視点で、各保険契約を見つめ直してみてください。
重複や無駄が見つかった場合の選択肢
重複や無駄が見つかった場合、どのような選択肢があるのでしょうか。特定の保険契約を解約する以外にも、いくつかの方法が考えられます。
- 解約: 保障が必要ないと判断した保険契約を解約します。ただし、特に終身保険や養老保険などの貯蓄型保険の場合、早期解約には「解約返戻金」が払込保険料の総額を下回る(元本割れする)リスクがあるため、慎重な判断が必要です。契約内容や加入期間によって解約返戻金の有無や金額は異なります。
- 減額: 死亡保険金額や入院給付金日額などの保障額を減らします。保障額を減らすことで、保険料の負担を軽減することができます。減額した部分に対応する解約返戻金を受け取れる場合もあります。
- 払済保険: 積立部分がある保険(終身保険など)で、今後の保険料の支払いを中止し、それまでに積み立てた保険料をもとに、保障額を減らして保険期間はそのまま継続する方法です。「払済(はらいずみ)」と読みます。保険料負担はなくなりますが、元の契約よりも保障額は小さくなります。
- 延長保険: 積立部分がある保険(終身保険など)で、今後の保険料の支払いを中止し、それまでに積み立てた保険料をもとに、元の保険金額を変えずに保険期間を短くする方法です。保険料負担はなくなりますが、保障を受けられる期間が短くなります。
これらの選択肢の中から、ご自身の状況や今後のライフプランに合わせて最適な方法を検討します。どの方法を選択した場合でも、メリット・デメリットや、将来の保障にどのような影響があるのかを十分に理解することが重要です。
まとめ:ご自身の状況に合った保険契約へ
加入中の複数の保険契約に重複や無駄がないかを確認するプロセスは、現在の保険契約がご自身の状況に合っているかを見極める上で非常に有効です。すべての契約をリストアップし、保障内容を整理し、現在の状況と照らし合わせることで、どこに重複や無駄があるのか、そして本当に必要な保障は何かが見えてきます。
保険は、万が一の際に生活を支えるための大切な備えですが、必要以上の保障は無駄な保険料負担につながります。ご自身のライフステージや状況変化に合わせて、定期的に保険契約を見直すことが、賢く保険を活用するために不可欠です。
この記事でご紹介した確認方法を参考に、ご自身の保険契約を自己判断で見直す第一歩を踏み出してみてください。もし、複雑で判断が難しいと感じる場合は、信頼できる専門家のアドバイスを求めることも一つの方法です。しかし、まずはご自身で現状を把握し、整理することから始めるのが良いでしょう。