保険で備えるべきリスクとは何か:自分に合った保障額を見極める視点
保険契約は、万が一の事態に備えるための大切な手段です。しかし、どのようなリスクに、どれくらいの備えが必要なのか判断に迷うこともあるかもしれません。現在の保険契約がご自身の状況に合っているかを見極めるために、保険で備えるべきリスクとその範囲について考える視点を持つことは有益です。
保険で備えるべきリスクの基本的な考え方
保険は、発生頻度は低いものの、発生した場合の経済的損失が大きいリスクに備えるためのものです。日常的な小さな出来事ではなく、「もし起きたら、経済的に立ち行かなくなる可能性がある」といった事態に焦点を当てて考えることが一般的です。
具体的には、以下のようなリスクが保険で備えることを検討する主な対象となります。
- 死亡: 家計の支えとなる方に万が一のことがあった場合、遺された家族の生活費や教育費などが大きな負担となるリスクです。
- 病気やケガによる長期療養・高度障害: 働けなくなった場合の収入減少や、治療費・介護費用などが長期にわたるリスクです。
- 火災や自然災害による資産への損害: 住宅や家財を失った場合の再建費用などがかかるリスクです。
- 賠償責任: 第三者に損害を与えてしまい、多額の賠償金を支払う義務が生じるリスクです。
これらのリスクのうち、ご自身やご家族にとって経済的な影響が特に大きいものは何かを考えることが出発点となります。
公的な制度や会社の保障でカバーされる範囲を把握する
保険契約を検討する前に、私たちが利用できる公的な制度や、勤務先の福利厚生による保障を確認することは非常に重要です。これらの保障だけで経済的なリスクに十分対応できる場合や、不足分だけを保険で補えばよい場合があるためです。
主な公的な制度には以下のようなものがあります。
- 健康保険・国民健康保険: 医療費の一部負担、高額療養費制度(医療費の自己負担額に上限を設ける制度)、傷病手当金(病気やケガで働けない期間の生活費の一部を補填する制度)などがあります。
- 厚生年金保険・国民年金保険: 亡くなった場合に遺族に支払われる遺族年金、障害の状態になった場合に支払われる障害年金などがあります。
- 雇用保険: 失業時の給付だけでなく、育児休業給付金や介護休業給付金などもあります。
- 労災保険: 業務中や通勤中の事故による病気、ケガ、死亡などに対して保険給付が行われます。
勤務先の福利厚生として、病気による休業期間の給与補填制度や、企業独自の死亡弔慰金制度などが用意されている場合もあります。
これらの公的制度や会社の保障で、ある程度のリスクはカバーされます。保険を検討する際には、これらの保障で不足する部分を補うという視点を持つことで、必要な保障額をより適切に見積もることができます。
必要な保障額を見極めるための視点
必要な保障額は、抱えているリスクの種類だけでなく、ご自身のライフステージ、家族構成、収入、貯蓄、負債などによって大きく異なります。一律に「いくらあれば十分」と言えるものではありません。
例えば、死亡保障額を考える際には、遺された家族の生活費、住居費、教育費などを合計し、そこから遺族年金や死亡退職金、現在利用できる貯蓄などを差し引いて、不足する金額を目安とします。子供が独立するまでの期間や、配偶者の働き方なども考慮に入れる必要があるでしょう。
医療保障や就業不能保障を考える際には、公的な健康保険や傷病手当金でカバーされる範囲を超えて必要となる治療費、入院中の雑費、回復期間中の生活費などを考慮します。貯蓄で一定期間の生活費や医療費を賄えるのであれば、その分保険で備える必要性は低くなるかもしれません。
重要なのは、「もし万が一の事態が起きたら、どのような費用がどれくらいかかりそうか」「それを公的制度や貯蓄でどこまで賄えるか」「それでも不足する分を保険でカバーしたいか」という流れで、具体的にシミュレーションしてみることです。漠然とした不安に任せて過大な保障を準備する必要があるか、あるいは本当に必要な保障は何かを、冷静に見極める視点が求められます。
まとめ:ご自身の状況に合わせた判断を
保険は安心を買うものとも言われますが、その安心が必要な範囲を超えて過剰な負担になっていないか、定期的に見直すことは合理的です。保険で備えるべきは、経済的に大きな打撃となるリスクであり、公的な制度や貯蓄でカバーできない部分です。
ご自身の現在の家族構成、収入、貯蓄状況、そして将来のライフプラン(子供の進学、住宅購入、退職など)を踏まえ、どのようなリスクにどの程度の備えが必要なのか、本記事でご紹介した考え方を参考に、ぜひ一度見直してみてください。現在の契約内容が、本当にご自身の「これで十分」な状態であるか、判断するための一助となれば幸いです。