加入中の貯蓄型保険、見直しは必要か:解約・継続の判断基準
はじめに:加入中の貯蓄型保険に対する疑問
保険契約の中には、将来に向けた貯蓄機能も併せ持つ「貯蓄型保険」と呼ばれる種類があります。例えば、終身保険や養老保険などがこれに該当します。これらの保険は、もしもの時の保障に加え、満期時や解約時にまとまったお金を受け取れるという特徴を持っています。
しかし、ご自身のライフステージが変化したり、経済状況が変わったりする中で、「この貯蓄型保険は今の自分に必要なのだろうか」「継続するべきか、それとも解約した方が良いのだろうか」といった疑問をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。保険契約は長期にわたることが多く、加入時の状況と現在とでは、ご自身を取り巻く環境が大きく変化している可能性も十分に考えられます。
この記事では、現在加入されている貯蓄型保険の見直しが必要かどうかを判断するための考え方や、解約・継続を検討する際の基準について解説します。特定の保険商品や解約・継続そのものを推奨するものではなく、ご自身で判断するための情報提供を目的としています。
貯蓄型保険とは:保障と貯蓄の機能
貯蓄型保険は、その名の通り、保障機能と貯蓄機能を組み合わせた保険です。代表的なものとして、以下のような種類があります。
- 終身保険: 保険期間が一生涯続く死亡保険です。解約時には「解約返戻金」が受け取れる場合があります。保険料払込期間を終えた後などは、解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を上回る(返戻率が100%を超える)設計になっていることが一般的です。
- 養老保険: 保険期間があらかじめ決められており、満期時に生存していた場合は「満期保険金」を受け取れます。保険期間中に亡くなった場合は「死亡保険金」が支払われます。満期保険金と死亡保険金は同額であることが一般的です。貯蓄性が高い反面、保険料は割高になる傾向があります。
- 学資保険: 子供の教育資金準備を目的とした保険です。子供の進学時期などに合わせて「祝金」や「満期保険金」が受け取れます。契約者(親など)に万一のことがあった場合の保障機能も併せ持っています。
これらの保険は、保険料の一部が将来の保険金支払いや解約返戻金に充てられるため、掛け捨て型の保険と比較すると保険料が高くなります。
なぜ貯蓄型保険の見直しが必要になるのか
貯蓄型保険を契約した時点から現在までに、以下のような状況の変化があった場合、見直しを検討する一つの契機となります。
- ライフステージの変化: 結婚、出産、子供の独立、住宅購入、転職、収入の変化などが考えられます。これらの変化により、必要な保障額や将来に備えるべき資金の目的が変わることがあります。
- 資産状況の変化: 貯蓄が増えた、投資を始めた、相続があったなど、ご自身の資産状況が変わった場合、保険による貯蓄の必要性や優先順位が変わる可能性があります。
- 金利環境の変化: 契約時と現在で金利水準が大きく異なる場合、保険で積み立てる効率について改めて検討する余地が生まれることがあります。
- 加入目的の再確認: 加入当時は漠然とした不安や勧められるままに契約したものの、改めて考えると加入目的がはっきりしない、あるいは目的が現状に合っていないと感じる場合も考えられます。
これらの変化があった場合、現在加入している貯蓄型保険が、ご自身の今の状況や将来の計画に本当に合っているのかを確認することが重要になります。
見直し判断のための基準と考え方
貯蓄型保険の見直しを検討する際に、ご自身で確認すべきいくつかの重要な点があります。
1. 加入時の目的と現状を比較する
- その保険に加入した一番の目的は何だったかを思い出してみてください(例:子供の教育資金、老後資金、もしもの時の家族への備えなど)。
- その目的は現在も有効でしょうか。目的達成のために、その保険が最も効率的で適切な方法でしょうか。
- 例えば、子供が独立した場合、学資保険や子供の成長を見越した死亡保障の必要性は変化しているかもしれません。
2. 解約返戻金(率)と払込期間を確認する
- 貯蓄型保険は、一般的に契約初期の解約返戻金は少なく、払込期間が長くなるほど増えていきます。払い込んだ保険料の総額に対して、解約返戻金がどれくらいの割合になっているかを示すのが「解約返戻率」です。
- 保険証券や保険会社の提供する資料で、現在の解約返戻金の額や、将来の解約返戻金の推移を確認してみてください。
- 「いつまで保険料を払い込むのか(払込期間)」と「いつまでに解約返戻率が100%を超えるのか」を確認することも重要です。払込期間が長く、まだ保険料の支払いが続く場合、途中で解約すると元本割れ(払い込んだ保険料の総額より解約返戻金が少なくなること)のリスクがあります。
3. 保障内容の必要性を確認する
- 貯蓄型保険には、死亡保障などの保障機能が付いています。この保障が、現在の状況においてご自身やご家族にとって本当に必要なものかを検討してください。
- 必要な保障額は、家族構成や収入、負債(住宅ローンなど)、公的な保障(遺族年金など)、会社の福利厚生などを考慮して判断します。
- 他の保険(掛け捨て型の定期保険など)や、すでに十分な資産がある場合は、貯蓄型保険の保障部分が過剰になっている可能性も考えられます。
4. 現在の資金計画と照らし合わせる
- 貯蓄型保険で積み立てている資金が、ご自身の現在の家計や将来の資金計画(教育資金、住宅購入資金、老後資金など)の中で、どのような位置づけになっているかを確認してください。
- 現在、急な資金が必要になった場合、貯蓄型保険を解約する以外の選択肢はありますか。解約以外の方法(契約者貸付など)がある場合も、その条件を確認しておくことが重要です。
- 貯蓄型保険以外に、資産形成のために利用しているもの(預貯金、投資信託、iDeCo、つみたてNISAなど)がある場合、それらを含めた全体像の中で、貯蓄型保険がどのような役割を果たしているかを考えてみてください。
見直しの具体的な選択肢(判断の参考として)
ご自身の状況を確認した結果、現在の貯蓄型保険が当初の目的に合わなくなっている、あるいは他の方法で備えた方が良いと感じる場合、いくつかの選択肢が考えられます。
- 継続: 現在の契約内容で問題なく、加入目的も変わっておらず、資金計画上も支障がない場合は、そのまま継続するという判断になります。
- 解約: 保険の必要性がなくなった、解約返戻率が十分に高くなったため他の用途に資金を使いたい、他の方法で資産形成したい、といった理由がある場合に検討します。ただし、解約返戻金が払い込み保険料を下回る「元本割れ」のリスクがある点は十分に考慮が必要です。
- 減額: 保障額や保険料を減らすことで、保険料の負担を軽減しつつ、ある程度の保障と解約返戻金を残す方法です。
- 払済保険への変更: その時点での解約返戻金をもとに、保険期間を変えずに保障額の少ない終身保険(元の契約が終身保険の場合など)に変更する方法です。これ以上保険料を払い込む必要はなくなります。
- 延長定期保険への変更: その時点での解約返戻金をもとに、死亡保障額は元の契約と同額のまま、保険期間を短い定期保険に変更する方法です。これ以上保険料を払い込む必要はなくなります。
これらの選択肢のいずれが良いかは、ご自身の状況、保険の種類、契約内容、そして将来の計画によって異なります。安易な判断ではなく、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを理解した上で検討することが重要です。
まとめ:ご自身にとっての最適な判断のために
加入中の貯蓄型保険が必要か不要か、継続か解約かといった判断は、画一的な基準で決まるものではありません。ご自身の現在のライフステージ、家族構成、資産状況、収入、そして将来どのような人生を送りたいかというライフプランなど、様々な要素を総合的に考慮して行う必要があります。
まずは、ご自身の保険証券をご確認いただき、加入している保険の種類、保障内容、保険料、そして解約返戻金の推移などを冷静に把握することから始めてみてください。そして、この記事で挙げた判断基準や考え方を参考に、ご自身の状況と照らし合わせてみましょう。
ご自身での判断が難しい場合や、より詳細な情報が必要な場合は、中立的な立場のファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談することも一つの方法です。重要なのは、他者に勧められるままに判断するのではなく、ご自身が納得した上で、最適な選択をすることです。