終身保険の払込期間が終わった後の保険:必要性を見極める考え方
終身保険の保険料払込期間が終了すると、毎月の保険料支払いがなくなります。これは経済的な負担が減るため喜ばしいことですが、同時に「この保険は今後も必要なのだろうか」と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。加入から年月が経ち、ご自身のライフステージや状況が変化していることも珍しくないため、このタイミングは保険契約を見直す良い機会となります。
ここでは、終身保険の払込期間が終了した後の保険契約について、必要性を見極めるための考え方や判断基準を分かりやすく解説します。
終身保険の払込期間終了とは
終身保険は、被保険者が亡くなった場合に保険金が支払われる死亡保険の一種で、保障が一生涯続くことが特徴です。保険料の払い込み方法には、一生涯払い続ける「終身払い」と、一定期間や一定年齢で払い込みを終える「有期払い」があります。
ここで焦点を当てるのは、後者の「有期払い」で加入した場合です。契約時に定めた保険料を払い込む期間(払込期間)が終了すると、それ以降の保険料の支払いは不要になります。しかし、保障は一生涯継続します。
払込期間終了後に保険を見直す理由
払込期間が終了すると、経済的な負担がなくなるため、そのまま契約を継続するのが自然な選択肢のように思えるかもしれません。しかし、なぜこのタイミングで見直しを検討する必要があるのでしょうか。主な理由は以下の通りです。
- 加入時からの状況変化: 保険に加入した時点から現在まで、結婚、子どもの誕生、住宅購入、子どもの独立など、様々なライフイベントがあったかもしれません。加入当初の目的や必要性が、現在の状況と合っているかを確認する時期です。
- 死亡保障の必要性の変化: 終身保険の主な目的は死亡保障です。例えば、子どもが独立したり、配偶者が経済的に自立したりしている場合、加入時ほど手厚い死亡保障が必要ではなくなっている可能性が考えられます。
- 資産としての価値の検討: 多くの終身保険には解約返戻金があり、払込期間が終了した時点である程度の金額になっていることがあります。この解約返戻金を含めた資産全体の中で、この終身保険を保有し続けることが最適な選択なのか、他の資産活用法と比較検討する視点も持つことができます。
見直し判断のためのチェックポイント
終身保険の払込期間終了後、その契約が必要か不要かを見極めるために、以下の点をチェックし、ご自身の状況と照らし合わせてみましょう。
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加入時の目的を再確認する
- その終身保険は、何のために加入したものでしょうか。(例:家族の生活保障、相続対策、ご自身の葬儀費用準備、貯蓄・資産形成の一部として)
- 保険証券や加入時の資料を確認してみましょう。もし書類が見当たらない場合は、保険会社に問い合わせてみることも可能です。
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現在の死亡保障ニーズを確認する
- 現在、万が一ご自身が亡くなった場合に、残されたご家族にどのくらいの資金が必要になるか考えます。
- 配偶者の収入、子どもの年齢や独立状況、遺族年金などの公的保障、会社の死亡退職金や弔慰金などを考慮して、必要な保障額を改めて算出してみましょう。
- 加入時の目的(例:子どもが成人するまでの生活費)が既に達成されている場合、その保険の死亡保障は不要になっている、あるいは減額しても問題ないという判断になることもあります。
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現在の貯蓄状況と将来計画を確認する
- 現在お持ちの預貯金、投資、その他の資産で、万が一の際や将来の資金ニーズにどこまで対応できるか確認します。
- 終身保険の解約返戻金が、現在の資産全体の中でどのような位置づけにあるか確認します。解約返戻金は、保険を解約した際に受け取れるお金のことです。払込期間終了後は、解約返戻金がすでに払い込んだ保険料の総額を上回っている場合が多いですが、そうでないケースもあります。
- 解約返戻金を将来の生活資金や他の目的に活用する必要があるか検討します。
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払込期間終了後の契約状態を理解する
- 保険料の支払いは不要になりますが、保障は一生涯続きます。
- 解約返戻金は、基本的にその後も緩やかに増加する場合が多いですが、増加のスピードは鈍化します。
- 契約内容によっては、所定の条件を満たせば、解約返戻金の一部を契約したまま引き出すことができる場合や、年金形式で受け取れるオプションが付いている場合もあります。
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ご自身の健康状態を考慮する
- もし現在の保険を解約した場合、今後、新たに保険に加入する必要が生じた際に、現在の健康状態によっては加入が難しくなったり、保険料が割高になったりする可能性があります。
- ご自身の健康状態を踏まえ、将来的な保険加入の可能性についても考慮に入れて判断します。
終身保険の払込期間終了後の主な選択肢
上記のチェックポイントを踏まえ、考えられる主な選択肢とその考慮事項を整理します。
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そのまま継続する:
- メリット:保険料負担なく、加入当初の保障を一生涯維持できます。保険契約に関する手続きは不要です。
- デメリット:他の資産活用と比較した場合に、資金効率が低いと感じるかもしれません。不要になった保障のために解約返戻金が固定されることになります。
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解約する:
- メリット:解約返戻金としてまとまった資金を受け取ることができ、その資金を他の目的に活用したり、より有利な形で運用したりすることが可能になります。
- デメリット:死亡保障はなくなります。解約返戻金が払い込んだ保険料総額を下回る「元本割れ」になるリスクもあります(払込期間終了後であれば元本割れのリスクは低いことが多いですが、契約内容によります)。健康状態によっては、新たな保険加入が難しくなります。
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減額・払済保険などに変更する:
- メリット:保障額を減らして保険料負担をなくしつつ(既に払込終了の場合は保険料負担なし)、保障の一部を残すことができます。減額した分に対応する解約返戻金を受け取れる場合があります。
- デメリット:保障額が減ります。変更後の保障額や解約返戻金の増え方などは、元の契約内容と異なります。
どの選択肢が最適かは、ご自身の現在の保障ニーズ、貯蓄状況、将来の計画、健康状態などによって異なります。
自己判断の重要性
終身保険の払込期間終了は、保険契約を見直す絶好のタイミングです。しかし、保険会社や特定の販売チャネルからの情報だけでなく、ご自身の状況を客観的に把握し、本記事で示したような判断基準に沿って、ご自身にとって本当に必要な保障は何か、資産全体の中で保険契約をどのように位置づけるかを考えることが重要です。
まずはご自身の保険証券を確認し、加入時の目的や現在の保障内容、解約返戻金の目安などを把握することから始めてみましょう。その上で、ご自身のライフプランと照らし合わせて、今後の契約について検討を進めてください。