手厚い公的保障や会社の福利厚生がある場合の保険の見直し基準
あなたの保険、公的保障や福利厚生との関係性は
多くの方が将来の安心のために保険に加入されています。しかし、会社員の場合、ご自身で加入している民間保険だけでなく、国が提供する公的保障や、会社独自の福利厚生による保障があることをご存知でしょうか。これらの保障内容を十分に理解せずに民間保険に加入していると、実は必要以上の保障を準備してしまっている可能性があります。
ご自身の状況に本当に合った保険を見極めるためには、まず土台となる公的保障と会社の福利厚生を把握することが重要です。これらの制度でカバーされる範囲を理解した上で、それでもなお不足する部分を民間の保険で補うという考え方が、合理的かつ効率的な保険設計につながります。
この記事では、会社員の方が知っておくべき主な公的保障や会社の福利厚生について触れながら、これらを踏まえた上でご自身の保険契約を見直す際の判断基準について解説します。
会社員が知っておくべき主な公的保障
会社員は、健康保険や厚生年金といった公的な社会保険に加入しています。これらの制度は、病気や怪我による医療費、働けなくなった場合の収入減、万が一の際の遺族の生活など、様々なリスクに対して一定の保障を提供してくれます。
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健康保険: 病気や怪我をした際の医療費負担を軽減するだけでなく、病気や怪我で働けなくなった場合には「傷病手当金」として給与の一部が支払われる制度や、医療費が高額になった場合に自己負担額に上限が設けられる「高額療養費制度」などがあります。
- 高額療養費制度: 医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合、その超えた分の払い戻しを受けられる制度です。所得によって限度額は異なりますが、これにより医療費負担の不安は大きく軽減されます。
- 傷病手当金: 病気や怪我のために会社を休み、報酬が受けられない場合に、最長1年6ヶ月間、標準報酬日額の約3分の2が支給される制度です。
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厚生年金: 老齢になった際の年金だけでなく、加入者が病気や怪我で一定の障害状態になった場合には「障害厚生年金」、加入者が亡くなった場合には遺族に「遺族厚生年金」が支給される制度です。これらの年金は、万が一の場合の家族の生活を支える重要な柱となります。
これらの公的保障は、多くの会社員にとって基本的なセーフティネットとなります。ご自身の加入している健康保険組合や年金事務所のウェブサイトなどで、さらに詳しい情報を確認することができます。
会社の福利厚生による保障内容の確認
企業によっては、法定の社会保険に加えて、従業員のために様々な福利厚生制度を設けています。これらの中には、万が一の際に経済的な支えとなる保障が含まれていることがあります。
- 死亡退職金・弔慰金: 従業員が在職中に亡くなった場合に、遺族に支払われる一時金です。
- 傷病見舞金: 病気や怪我で療養する従業員に対して支払われる見舞金です。
- 団体保険: 企業が従業員のために保険会社と契約する保険です。生命保険や医療保険、傷害保険など様々な種類があり、従業員やその家族が割安な保険料で加入できる場合があります。
- 健康保険組合独自の付加給付: 大企業の健康保険組合などでは、国の高額療養費制度に上乗せして医療費の自己負担をさらに軽減する独自の給付制度(付加給付)を設けている場合があります。
これらの会社の福利厚生による保障内容は、企業の規模や業種によって大きく異なります。ご自身の会社の就業規則や福利厚生規程を確認したり、総務部や人事部に問い合わせることで、どのような保障があるのか具体的に把握できます。
公的保障・福利厚生を踏まえた保険の見直し基準
公的保障や会社の福利厚生による保障内容を把握した上で、ご自身の民間保険を見直す際の判断基準を考えます。
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現状の保障を整理する:
- まず、現在ご自身が加入している民間保険の契約内容(保険種類、保障額、保険期間、保険料など)を正確に把握します。保険証券を確認することが第一歩です。
- 次に、上記で確認した公的保障(高額療養費制度、傷病手当金、遺族年金、障害年金など)や会社の福利厚生(死亡退職金、弔慰金、団体保険、付加給付など)の内容を具体的に整理します。
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どのようなリスクに備えたいかを明確にする:
- ご自身やご家族にとって、どのようなリスク(例:一家の大黒柱に万が一のことがあった場合の家族の生活費、大きな病気や怪我で長期に働けなくなった場合の収入減、高額な医療費など)に備えることが重要かを考えます。
- 特に、お子様の教育資金やご自身の老後資金など、将来的なライフプランと照らし合わせて、いつまでに、いくら準備する必要があるのかを具体的に検討します。
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公的保障・福利厚生でカバーされる範囲を評価する:
- ステップ2で明確にしたリスクに対して、ステップ1で整理した公的保障や会社の福利厚生がどの程度カバーしてくれるのかを評価します。例えば、万が一の場合の遺族の生活費について、遺族年金や死亡退職金・弔慰金でどのくらい賄えるのかを試算してみます。医療費についても、高額療養費制度や会社の付加給付で自己負担がいくらになるのかを確認します。
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民間保険で補うべき「不足」を見極める:
- ステップ2で設定した「備えたいリスクに対する必要な金額」から、ステップ3で評価した「公的保障・福利厚生でカバーされる金額」を差し引きます。この差し引きによって生まれる「不足額」が、民間の保険で補うべき目安となります。
- 例えば、遺族年金や死亡退職金・弔慰金だけでは、お子様が独立するまでの生活費や教育費が賄えない場合に、その不足分を生命保険の死亡保障でカバーすることを検討します。病気や怪我で長期休業した場合に、傷病手当金や会社の傷病見舞金だけでは生活費が不足する場合に、就業不能保険などを検討するといった考え方です。
このプロセスを通じて、現在加入している民間保険の保障内容が、公的保障や福利厚生と合わせて考えた場合に過剰になっていないか、あるいは逆に不足している部分はないかを見極めることができます。必要以上に手厚い保障は、その分保険料負担も大きくなります。ご自身の状況に合わせた「本当に必要な保障」に絞り込むことで、合理的な保険設計が可能になります。
まとめ:ご自身の状況に合わせた見直しを
民間保険は、公的保障や会社の福利厚生ではカバーしきれない部分や、ご自身の特定のニーズに合わせてカスタマイズできる点が強みです。しかし、まずは土台となる公的保障や福利厚生の内容を正しく理解することが、無駄のない保険選びの第一歩となります。
ご自身の状況に合った保険契約になっているかを見直す際には、これらの情報を参考に、現状の保障内容と、ご自身やご家族にとって本当に必要な保障額や期間を改めて検討してみてください。